響き石(208号)

生まれたよ ぼく やっとここにやってきた
まだ眼は開いていないけどまだ耳も聞こえないけれどぼくは知ってる
ここがどんなにすばらしいところか (中略)
いまからぼくは遺言する…
▼谷川俊太郎さんの詩集「子どもたちの遺言」は、逆転の発想から生まれました。生まれたばかりで、死から遠い子どもが大人に向かって遺言をするほど、現代人は切実で、危ない時代に生きている、という問題意識が投影されています。
▼あとがきで、谷川さんは「大人の言語がだんだんデジタル化してゆくのに反して、子どもの言語はアナログにとどまっている」「年取るにつれて、子ども、あるいは若者の身になって詩を書くほうが書きやすいと思うことが多くなった」と、心境を綴っています。
▼ワセグリでは今年も、現役活動を終えた新OB、入れ替わりに新しい部員が誕生します。今の学生合唱団の部員減少は深刻です。OB会も若者の身になったような感性、支援を忘れないようにしたいものです。「生まれたよぼく」の遺言はこう結ばれています。
そして人はここにやってきた日のことを
忘れずにいてほしい