響き石(211号)

「音楽のようになりたい 音楽のようにからだから 心への迷路を やすやすとたどりたい」 ▼谷川俊太郎さんの詩集「聴くと聞こえる」(創元社)による谷川さんと長男で作曲家の賢作さんのコンサートに行ってきました。87歳の谷川さんはやや高い良く通る声で詩を朗読し、賢作さんが即興でピアノのメロディーを添えるーー。「詩も音楽も沈黙・静けさを古里として生まれてくる姉妹なのです」。老若男女の幅広い層の聴衆で埋まった会場には、静謐でゆったりとした時が流れました。 ▼「ことばあそびうた」「死んだ男の残したもの」「クレーの絵本」など、谷川さんの詩から多くの歌が今も生まれています。その詩の深さに加え、独特のリズム感、歌との相性の良さは、谷川さんが幼少期からピアノを習うなど、音楽に包まれて暮らしてきたことと無縁ではないでしょう。 ▼学生時代、音符と身体で覚えた谷川さんの詩も、最近詩集を読み返して、改めて腹に落ちる言葉が多くあります。インターネットやスマートフォンで情報の洪水に追い立てられるように生きる現代人。たまには詩に触れ、ゆっくり深呼吸してみるのもいいでしょう。