【現役六連】磨き上げた表現力、聴衆を虜に

令和初となった今回の六連。ワセグリのステージは、約10年ぶりとなった宇田川安明先生編曲によるポップス曲メドレーだった。
宇田川先生編曲のステージは、これまで何度かあるが、特に好評を博したのが1997年の第46回六連の単独ステージで演奏された「東京だよおっかさん’97」であろう。現役がこの「おっかさん」の演奏をリスペクトしていたのであろうか、今回の演奏でも「おっかさん」で取り上げられた曲が随所で現れ、往時を知るファンにとってはニクい演出であった。
2010年前後から、ワセグリの六連単独演奏ではエンタメ性が強調され、歌以外に踊りや奇抜な衣装などで会場を沸かすことが多かった。今回の演奏ではそういった視覚的な演出を敢えて抑えて、ここ数年で飛躍的にレベルアップした合唱の表現力で聴衆を虜にしたことは特筆に値する。

アンコールは沢田研二の「TOKIO」=撮影:スタッフ・テス 中岡良敬

六連直前の5月5日に現役のFacebookに投稿された宇田川先生へのインタビュー記事で、宇田川先生が「ピアニッシモを上手く歌える」と評していた。その通り、今回の演奏で特に素晴らしかったのが、THE BOOMの代表曲「島唄」における弱声の美しさだ。今回の六連で弱声を最も美しく演奏していたのはワセグリだったと断言してもよい。ステージが終わった後、観客からこの日一番といえる万雷の拍手が送られ、ブラボーコールが飛び交った。
他の5団体についてもハイレベルな演奏が続き、男声合唱の祭典のような六連であった。ただ、惜しむらくは、遠方の人が来場しにくいゴールデンウイーク後の日曜夕方開催となり、来場客数が若干寂しかった。
今年はこれから四連、定演のほか、国内演奏旅行、さらには上海演奏旅行と、現役にとってハードな1年となるが、それら一つひとつを糧にして、OBの度肝を抜かすようなハイレベルな演奏をしてくれることを期待したい。
濱野将廉(H14卒)