【現役定演】合唱の技術的拡充続く~スケール大きく、表情付けも豊かに

三好 駿(H23卒)

現役の第67回定期演奏会は5年ぶりに東京芸術劇場での開催、自分の席から客席を見まわした印象では8~9割ほどの大入り。チケットの販売は1772枚にのぼった。例年通り、校歌・クラブソングで幕開け。「元気よく」の演奏のなかにも、決めるところは決める。整然とした立ち姿も良かった。

第1ステージは学生指揮者、横野奏士郎の指揮による鈴木憲夫作曲『永久ニ』。四手ピアノのダイナミクスとともに、合唱もレンジの広い演奏を聴かせた。発声も崩れずに縄文を主題とした大曲を歌い切った。他方、音色に工夫の余地があった。弱音では場面に沿った息遣いがあったが、強奏すると歌うことに懸命なあまり常に同じように聞こえるのがもったいないところ。

第2ステージは青島広志作曲『ポール・バンヤン』を作曲者のピアノで。指揮は引き続き横野指揮者。青島は筆者4年生時の第58回定期以来の出演で、懐かしく鑑賞した。青島の演出で演技をともなったステージ。演奏は他のステージと比べると、発声もアンサンブルも精緻とは言えないものの、表情付けが非常に豊か。青島から音楽的な指導はほとんどなく、演出からこの表現力が導かれたのだとしたら興味深い。青島は直後に移動する予定で、第2ステージはステージアンコール。「さんぽ」を9年前と同じく会場と一緒に歌い踊った。振付も同じで、自然と体が動いた。

第3ステージ、今年は三宅悠太書下ろしの『修司の海』。指揮は相澤直人。寺山修司の海にまつわる詩句7編が5曲に構成され、協奏的なピアノとともに演奏された。曲ごとに、正統的合唱、ブルース、現代音楽的書法と表情を変え、三宅の引出しの多さが発揮された。また、『修司の海』は三宅の初めての男声合唱曲だが、筆者が男声合唱の魅力と考えている温度感を、冷たさから温かさまで感じられる作品となった。合唱も、新曲委嘱の常で時間的余裕のないなかでの仕上げとなったが、それを感じさせないスケールの大きな演奏で応えていた。

アンコールは「海、その愛」「青春譜」「遙かな友に」を歌い、例年通りのストームで終演。客席の反応も温かい、良い演奏会になった。数年来の技術的充実は継続している。来年、再来年へと期待が高まった。(敬称略)