コバケン先生、入魂の「カルミナ・ブラーナ」~武蔵野合唱団定演

武蔵野合唱団の第52回定期演奏会が10月3日夜、東京芸術劇場で開催された。小林研一郎先生の指揮で、百数十人の団員がカール・オルフのカンタータ「カルミナ・ブラーナ」を圧倒的な迫力で歌い上げ、満員の会場から万雷の拍手とブラボー・コールが沸き起こった。

武蔵野合唱団が「カルミナ」を歌うのは18回目で、このうち小林先生の指揮では11回目と、先生と合唱団の歴史を象徴する作品となっている。今回はオーケストラに読売日本交響楽団、ソリストに澤江衣里(ソプラノ)、高橋淳(テノール)、大沼徹(バリトン)の各氏、児童合唱にフレーベル少年合唱団を迎えて演奏した。

武蔵野合唱団第52回定演のチラシ

第1ステージはチャイコフスキーの大序曲「1812年」。ナポレオンによるロシア侵攻を題材にした作品で、ロシア正教の聖歌の厳かな合唱で始まり、ナポレオン軍の侵攻を金管楽器がフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の旋律で表現。やがて大砲(大太鼓)で侵攻軍を蹴散らし、ロシア帝国国歌を高らかに歌い上げ、フィナーレを迎えた。

続く「カルミナ・ブラーナ」は、オルフが中世の世俗的な24篇の詩歌を基に作曲した、演奏時間が1時間を超す長大なカンタータ。映画やドラマ、CMによく使われる有名な「おお、運命の女神よ」の大合唱で始まり、「序」「初春に」「酒場にて」「愛の誘い」「エピローグ」と、世間に翻弄されながら生きる男の一生を描いている。

「カルミナ・ブラーナ」のステージ(武蔵野合唱団facebookから拝借しました)

小林先生は来年80歳を迎えるとは思えない流麗なタクトと迫力あふれる息遣い、軽快なフットワークで、曲の強烈なエネルギーと反抗精神を引き出した。武蔵野合唱団も全員が暗譜で、人数以上に響く声量、執拗に立てた子音、磨き上げたハーモニーで熱唱。特に男声は約40人と少人数ながら、多くの単独演奏箇所を力強く、堅実に歌い上げ、観客を魅了した。最後は再び冒頭の「おお、運命の女神よ」の合唱を繰り返し、小林先生は合唱の声を会場全体に送り出すようなお馴染みのポーズをとり、指揮棒を天に突き上げて締めくくった。

演奏が終わっても〝コバケン劇場〟は終わらない。何度もカーテンコールをして、演奏者、聴衆への感謝の気持ちを全身で表現。合唱団もパートごとに紹介し、お辞儀をさせて、聴衆の拍手に応えた。最後に小林先生は「この迫力、入魂の演奏。合唱団はよくぞここまで楽譜なしで歌う練習をしてきたことと思います」と団員たちをたたえた。