現役、12.28定演へラストスパート~コロナ乗り越え集大成の舞台へ

早稲田大学グリークラブは12月28日(月)、第68回定期演奏会を府中の森芸術劇場どりーむホール(18:00開演)で開催する。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、演奏会や行事が相次ぎ中止となり、活動が大幅に制限されるなか、8月末に練習を再開。今も限られた練習時間など多くの試練を乗り越えながら、集大成となる舞台に向けてラストスパートをかけている。

マスクを着用して間隔をあけるなどコロナ対策を徹底して練習に励む現役グリー

2020年度の現役グリーは2月13日の第69回送別演奏会で、男声合唱組曲「草野心平の詩から」を演奏して好スタートを切った。しかしコロナの感染拡大で、大学からのサークル活動自粛要請を受け、3月以降は活動を休止。5月の第69回東京六大学合唱連盟定期演奏会、6月の第69回東西四大学合唱演奏会は中止となった。
学生がキャンパスに立ち入れない状況で、新人勧誘活動も大幅に制限された。SNSやZoomを活用した勧誘、他の合唱団体と連携したオンライン説明会などを行った。恒例の群馬県北軽井沢の石田観光農園での夏合宿も中止した。
8月末、全日本合唱連盟の「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン」をさらに強化した独自のガイドラインを策定して、練習を再開。新人練習を2か月で終え、現在は週3回ペースで練習を続けている。
今回の定演は、限られた練習日程や演奏のクオリティーを考慮して、3ステージ構成にする。それでも、委嘱初演作品や新しい指揮者を招くなど、意欲的なプログラムを組んだ。

【第68回定期演奏会プログラム】
Ⅰ 西下航平 委嘱初演作品「焦点」(作詩:広津里香)
   指揮:床坊太郎(学生) ピアノ:村田雅之
Ⅱ 男声合唱組曲「水のいのち」(作曲:髙田三郎)
   指揮:キハラ良尚 ピアノ:鈴木慎崇
Ⅲ 男声合唱・ピアノ・パーカッションのための「起点」
   (作詩:木島始 作曲:信長貴富)
   指揮:山脇卓也(H10卒) ピアノ:松元博志
   パーカッション:久米彩音、牧野美沙

逆境下でも前を向いて

2020年度学生指揮者  床坊太郎(4年)

2020度の現役グリークラブは、コロナ禍という未曽有の事態で、東京六連、東西四連が中止になるなど活動が大幅に制限された。それだけに12月28日の第68回定期演奏会にかける思いはひとしおだ。学生指揮者の床坊太郎さん(4年)に定演への意気込みを聞いた。
――北陸出身の学生指揮者は初めてではないですか。
「金沢泉丘高校の合唱部(混声)でパートリーダーを務め、高2の時に第8回声楽アンサンブルコンテスト全国大会で銀賞を受賞しました。早稲田大学に入って、グリークラブに入部するとともに、学内に女声合唱団がないのは機会不平等だと感じて、18年に早大女声合唱団を創立するお手伝いをしました」
「僕の音楽へのアプローチは、はっきりと外部に聴こえる結果をもたらそうというのではありません。部員たちに考えることを促して、こういう考え、姿勢で向き合うと面白いと気づいてもらい、その結果としての音を聴いてほしいと思っています。そして、卒団しても『何らかの形で合唱を続けてみよう』と思ってもらえるようになるのが理想です」
――コロナで活動ができなかった時期をどう過ごしましたか。
「2月下旬に大学から施設の使用禁止を言い渡されてから、部員のモチベーションにバラつきが出てきました。練習系もモチベーションの管理まではできません。僕自身も六連、四連の時期に何もできず、ちょっと燃え尽きかけたことがありました」
「8月の終わりから練習を徐々に再開し、現在は週3回ペースで行っています。正直厳しいですが、これまでに確立した練習スタイルで運用しながら、常に最良の方法を探していきます」
――定期演奏会の聴きどころは。
「とにかく新しいワセグリの姿を見せたいと思います。元々、4ステージ構成を考えていましたが、演奏のクオリティーを担保するために、3ステ構成にしました」
「目玉は、山脇卓也先生(H10卒)が指揮する男声合唱・ピアノ・パーカッションのための『起点』(信長貴富作曲)です。1945年の岡山大空襲と広島での敗戦の記憶による木島始の詩は、人類初の人工衛星も描いていて、戦後世界への警鐘を込めています」
「今年は戦後75年の節目にあたります。ワセグリ伝統の『縄文』シリーズもありますが、過去を見つめるだけでなく、前を向きたいという思いで、この曲を選びました。山脇先生の指揮も、現役ではこれまで合同演奏で何度かありましたが、ワセグリ単独では初めてとなります」
「さらに東京混声合唱団などで活躍するキハラ良尚先生の指揮で、男声合唱組曲『水のいのち』をお送りします。キハラ先生自身が『世界の分断が進むなかで、これがいい』と選曲しました」
「僕の学指揮ステージは若手作曲家、西下航平氏の委嘱作品を初演します。金沢ゆかりの詩人、広津里香(1938~67)の詩に曲を付け、いい感じで花が開きそうな予感があります。この曲が何年も愛され、男声合唱のスタンダードになれればいいと思っています」
構成・杉野耕一(S59卒)