佐々木 豊(S59卒)
6月25日(日)の夕刻、サントリーホールで、「コバケンとその仲間たちオーケストラ第86回演奏会」を聴いた。今回は小林研一郎先生が最も得意とする「チャイコフスキー交響曲第5番」の公開リハーサル付き演奏会。客席には40名ほどのワセグリOB関係者の姿があった。
開演前、ステージには私服姿の団員が既に勢揃いしていて、思い思いに練習をしている。
19時、フリーアナウンサーの朝岡聡さんが登場。オーケストラの紹介をし、公開リハーサルを「鶴の恩返し」にたとえ、「鶴が自分の羽毛で機を織っているところを見せてくれるようなもの」と説明して笑いを誘う。
リハーサル開始。「あまりお客様を意識しないで」「これは君たちにとっても良い経験だよ」「音が遠くまで届くように」などという小林先生の言葉は明瞭に聞き取れる。文字通り「仲間」として、悪ければ普通に注意をし、良ければ褒めもする。お馴染みの唸り声も、「そう!」という絶叫のような肯定の感動詞も。「本番だけうまくやろうと思わないで」とか、特定の団員への「お腹に赤ちゃんがいるんだよね、気を付けて」などという言葉には、思わず笑ってしまう。先生が「ここは腰を浮かせて弾くくらいのつもりで」と言って、第1ヴァイオリン全員が実際に立ち上がって演奏する場面もあった。
とにかくちょっとした指示でオケの音がガラリと変わるのを何度も実感。感情移入し、自分も奏者のひとりになったような感覚になるのはまさしくコバケンマジックの世界か。
全曲をさらう時間はなく、要所をピックアップしながら、40分ほどでリハーサル終了。
20時12分、全員がお揃いの黒のTシャツ姿で再登場。小林先生だけは燕尾服姿で本番が始まる。リハーサルでさらった部分が出てくると、「あ、ここだな」とよくわかる。あっという間の50分だった。
演奏が終わるや万雷の拍手、そして「ブラボー!」の声、掲げられる「ブラボータオル」。カーテンコールを終え、21時15分終演。
小林先生の素晴らしさ、一緒に音楽ができることがいかに贅沢なことかをあらためて思い知らされる機会にもなった。1週間後の西宮でのOB四連「さすらう若人の歌」が、本当にもう楽しみでならない。