ワセグリ定演 「縄文」の遺伝子は健在~委嘱初演作品も熱唱

早稲田大学グリークラブは12月26日、第71回定期演奏会を東京・錦糸町のすみだトリフォニーホール大ホールで開催しました。6年連続の委嘱作品初演、ワセグリにとって馴染み深い「縄文」(作詩:宗左近、作曲:荻久保和明)など、熱量の高いプログラムを約50人のメンバーが熱唱しました。

第1ステージは男声合唱とパーカッションのための「饗宴の歌」(信長貴富作曲)を、学生指揮者の上間創さん(4年)の指揮、篠崎智氏のパーカッションで演奏しました。アメリカ・インディアンの口承詩から、彼らのたくましい生命力や祈りの心を、パーカッションのリズムに乗ってエネルギッシュに歌い上げました。終曲ではメンバーもリコーダーやギター、タンバリンなどの楽器を演奏してヒートアップし、盛り上がりが最高潮に達したところでフィナーレとなりました。

 第2ステージは、男声合唱とピアノのための「世界から忘れ去られて」(委嘱初演)。現代詩の世界でカリスマ的人気を誇る最果タヒ氏の「孤独」をテーマにした詩から、新進気鋭の作曲家、田畠佑一氏が組曲を作曲しました。孤独による不安や錯乱、それでも自己肯定したい、希望を見いだしたいという感情の揺らぎを、黒川和伸氏の指揮、渡辺研一郎氏のピアノで、情感豊かに描き出しました。

そして第3ステージの「縄文」は、作曲者の荻久保先生自身の指揮、中島剛氏のピアノで演奏しました。今年はワセグリの1983年の男声版初演(指揮者は小林研一郎先生)から40年、荻久保先生は演奏会パンフレットに「伝えるべきものは伝えないと、縄文の遺伝子を何としても残さないと。残された僕の時間の大切な使命のひとつだから」と綴っていました。そんな先生の思いに応えるように、メンバーは少人数ながら骨太の発声で、魂の込もった歌声を聴かせてくれました。演奏終了後には会場から多くの「ブラボー!」が連呼されました。

アンコールは荻久保先生指揮でピアノ伴奏版の「鷗」(木下牧子作曲、荻久保和明編曲)、黒川氏指揮で「ひとめぐり」(三宅悠太作曲)、そして学生指揮で「うたをうたうのはわすれても」(津田元作曲)、「遙かな友に」を演奏しました。

このあと恒例のステージストームに移り、メンバーがパート別に横断幕を掲げ、肩を組みながら「紺碧の空」「ひかる青雲」「斎太郎節」を歌い、最後に「早稲田の栄光」で締めくくりました。