早稲田大学グリークラブの第65回定期演奏会が2017年12月3日、すみだトリフォニーホール大ホールで開催された。ワセグリで歌い継がれてきた伝統の大曲から、現代音楽の難曲を並べた「攻め」のプログラムで、80人余りの団員が重厚なハーモニーで圧巻の演奏を披露した。
第1ステージは黒人霊歌集(指揮・中島龍之介さん=学生)、第2ステージはワセグリの十八番、D・ショスタコーヴィチの「十の詩曲」より「六つの男声合唱曲」を、佐藤拓さん(H15卒)の指揮で高らかに歌い上げた。第3ステージは、05年に男声版を委嘱初演した「カウボーイ・ポップ」(信長貴富氏作曲)を、藤井宏樹氏の指揮で12年ぶりに再演した。
第4ステージの「男声合唱のための『東海道四谷怪談』」(千原英喜氏作曲)は、荻久保和明氏を自身の作品以外の曲で初めて指揮者に迎えた。団員は黒服に着替え、パーカッションの伴奏と巧みな舞台演出で、怪奇幻想の恐怖と歓喜恍惚が入りまじる怪談の世界を表現した。
パーカッションを除くと全曲アカペラという大胆なプログラム。ほぼ満席の1553人の聴衆から大きな拍手と歓声が起こり、アンコールも5曲演奏した。
17年の現役グリーは送別演奏会の「Sea Chanties」で船出し、東京六連の委嘱初演「ブレイブ・ストーリー」、東西四連の「北東欧アラカルトステージ~若人と海~」、定演と、挑戦的なプログラムで質の高い演奏を聴かせてくれた。
◎挑戦続けた1年 定演に結実
2017年度部長 後藤貴央(新OB)
私たちはこの1年間、「挑戦」を掲げて活動を行いました。これまでワセグリが積み上げてきた伝統を受け継ぐようなステージはもちろん、一方でこれまでのワセグリがやってこなかったようなステージなど、アプローチの仕方は様々ではありますが、常に「挑戦」をしてきました。それが先日開催した定期演奏会のプログラムによく表われていると自負しています。
ワセグリ史上、これまでになかった選曲や指揮者の選定、また両者のこれまでになかった組み合わせで合唱の新しい可能性を模索する、それはまさしく「挑戦」でした。これまでよく歌われてきた曲も、世相や歌い手によって帯びる意味合いは変わってきます。その選曲の中に現代を生きる私たちの想いを託す、それもまた「挑戦」でした。
また、最高学年として過ごしたこの1年間は、110年という長きにわたって積み上げられてきたワセグリの伝統の重みを強く感じる1年間でもありました。先達の苦労は同じ立場になってみなければ本当の意味ではわからないということも痛感しました。
それでも、重みを受け止めることだけに気を取られず、歩みを続けなくてはなりません。苦悩しながら、迷いながら、前に進まなければなりません。ハーバードグリーとのジョイントコンサート、久々となる長期の国内演奏旅行、積極的な依頼演奏など歩みを止めることなく進み続けました。
これらが私たちの挑戦の足跡です。ワセグリの一つの節目を迎えるこの年に、様々なことに挑戦させてもらえたこと、感謝の念に堪えません。
ご支援、ご声援をくださったOBの皆様、ご指導くださった先輩方、そして支えてくれた後輩諸君に心から御礼申し上げます。
◎豪華絢爛なフルコース ゾクゾクした低音の鳴り
大曲盛り合わせ、有名指揮者陣、たくさんのソリストとすごいベース、客の入りも盛況と実に豪華絢爛、ワセグリらしい定期演奏会でした。
まず曲目。黒人霊歌集に「十の詩曲」、信長貴富「カウボーイ・ポップ」、千原英喜「東海道四谷怪談」と、フレンチのフルコースに例えるなら、メインの魚料理の後、さらに肉料理が出てくるような大盛り合わせ。指揮者陣は我らの佐藤拓さん(H15卒)に、藤井宏樹先生、荻久保和明先生が出演、さらにその後には荻久保先生の講話までありました。
肝心の演奏。ソリストがアンコールを除いて総勢18名。ソロを聴いていて思ったのは、実にベースの出来が良く、荻久保先生もステージ上で大変に褒めていらっしゃいました。背中をゾクゾクさせる低音の鳴りはなかなかの評判です。本当に素晴らしかった。
そして何より客の入りは1553名と定員の8割6分が埋まっていました。一OBとして定演が盛況というのは実に心強く感じるものです。現役諸君、是非とも来年の定演は満員に!
ただ、あえて言えば、後半のステージで声が疲れて出にくくなっていたこと、欲を言えば、トップテノールにもう少し汗ふりまいて歌う荒々しい迫力が欲しい。またOBは楽しくても一般のお客さんは少し聴き疲れの表情。選曲を含めてまだまだ検討の余地あり。春の新入生勧誘も成功させて、さらにすごいワセグリを目指せるはずです。OBとして現役諸君の「歌への思い」がよく伝わりましたよ。応援しています。
望月俊(H24卒)