川元啓司(S56卒、カワイ出版前編集長)
今年は台風の被害が大きな範囲に及びました。被災された方には心からお見舞い申し上げます。
10月12日に予定されていた、NHK全国学校音楽コンクール(通称Nコン)の高等学校の部が、台風19号の来襲により中止されたことをご存知の方も多いと思います。結果的には11月28日に「延期」という形で決着したので、ひと安心といったところですが、出場校の皆さんは気が気ではなかったことでしょう。
大学から合唱を始めた私には、もちろんそれ以前のコンクール経験はありませんが、卒業後にたった一度だけ合唱連盟のコンクールに出場したことがあります。
浜松に1年いたときに、4つの合唱団に入っていたのですが、その中のひとつが職場の部で、静岡県大会から関東大会に進みました。グリーで4年間過ごした私には、まるでお遊びのような合唱団ではありましたが、何しろ静岡県大会の職場の部のエントリーが、その1団体のみでしたので……(笑)。
さて、その全日本合唱コンクールですが、今年から小学校の部が新設されました。合唱人口の伸び悩みから、対象を拡大しないとやっていけない、というのが正直なところなんでしょう。1991年に中学校部門が新設されてから18年、ついに小学校にまで及んだわけです。
仕事でこれまで何度もコンクール会場に足を運びましたが、どうにも納得のいかないことがあります。それは、一般だろうが大学だろうが高校だろうが中学だろうが、自由曲のレパートリーがほとんど違わないということです。小学校も多分同じ傾向を辿ることでしょう。
もちろん音楽に年齢差を持ち込む必要はないのかも知れませんが、その年齢の肉体的・精神的な発達段階に適した音楽というものもあるのでは、と考え込んでしまうのです。「そんな考えで金賞が獲れるか!」「金賞を獲るにはそれなりの曲があるのだ!」という声に抗うのは骨の折れることですが。
ぜひ一度、できれば全国大会の会場に足を運んでみてください。参加団体の技量の高さに触れることも勉強になりますし、一方で私が抱いている疑問も理解できるのではないかと思います。
火花の散るような現代作品の合間に、ふっと古典的なレパートリーを聴くと、実にほっとした気分になります。ただし、その団体が金賞を獲ることはほとんどありませんがね。