早稲田大学グリークラブの第67回定期演奏会が12月7日、東京芸術劇場コンサートホールで開催された。委嘱初演を含む3ステージ構成の意欲的なプログラムを、70人余りのメンバーが重厚かつ繊細なハーモニーで、表情、色彩豊かに歌い、満員の聴衆から大きな拍手を受けた。
第1ステージは、男声合唱組曲「永久ニ(トコシナニ)」(鈴木憲夫作詞作曲)。古代・縄文に想いを馳せながら生命や宇宙をテーマにした壮大なスケールの曲を、学生指揮者の横野奏士郎さん(4年)の指揮、牧野圭吾、松木詩奈両氏のピアノ連弾で演奏した。
1曲目「永久ニ」は日本書紀の古語で、古代の精神と生命が永久に継承されることを願う祈りの歌で始まり、2曲目「星の降る丘」は、変化してきた人の営みと人の世を照らし続けた星空を対照的に表現。3曲目「宇宙(アメノシタ)のもと」は、自然への賛辞、生と死の無限の連鎖など、古代からの声が時空を超えて現代に届くさまを歌い上げた。
第2ステージは、作曲家の青島広志氏プロデュースによる「子どもの心を忘れない人たちのためのポール・バンヤン(合唱版)」を、青島氏自身のピアノ、横野さんの指揮で演奏した。アメリカの西部開拓時代の伝説上の木こりの巨人、ポール・バンヤンを題材に、青島氏の遊び心満載の演出で、文明の発達で脅かされる森林、電気ノコギリとの対決などのシーンを、時にメルヘンチックに、時にコミカルに歌って、聴衆を楽しませた。アンコールはアニメ「となりのトトロ」から「さんぽ」を、青島氏の音頭で聴衆と一緒に踊りながら歌った。
第3ステージは、早稲田出身の劇作家・歌人、寺山修司(1935~83)の海にまつわる詩句に、三宅悠太氏が作曲した男声合唱とピアノのための「修司の海」を、相澤直人氏の指揮、渡辺研一郎氏のピアノで初演した。「言葉の錬金術師」の異名を持つほど時代を鋭敏に切り取ってきた寺山の詩に、色彩感あふれる旋律がついて、孤独、憧憬、追憶など多彩な表情や場面を情感豊かに歌い上げた。演奏後、三宅氏が客席からステージに呼ばれ、ひときわ大きな拍手が起こった。
アンコールは相澤氏の指揮で加山雄三の「海、その愛」、横野さんの指揮で「青春譜」「遥かな友に」を演奏した。このあとの恒例のステージストームでは、この定演で卒団する4年生が最前列に並び、後輩たちが「炎のバリトン」「男はべえす」などの横断幕を掲げて、全員が肩を組んで「紺碧の空」「ひかる青雲」「斎太郎節」「早稲田の栄光」を歌って終演した。