【音楽リレー評論】頑張れ大学合唱団~現役の対策徹底、定演成功に拍手

山脇 卓也(H10卒、合唱指揮者)

昨年のOB六連、せっかくの機会をいただいて皆様のご協力の下で楽しく練習をしていたのが中止になり、はや半年以上が過ぎました。皆様いかがお過ごしでしょうか。私は昨年の緊急事態宣言後より、いかに合唱活動を再開させるか、ということに向き合って来ましたが、本当に難しい世の中になった、ということを実感しています。
まず練習が難しい。何より借りられる場所が少なくなりました。部屋の定員も大幅に減らされるため、かなり空間に余裕のある会場でしか合唱練習ができなくなりました。自治体によっては合唱活動への貸出を禁止しているところもあり、会場確保は大変なのです。
次に困るのが集客です。だいたい、いつもの半分くらいになりました。距離をとるために1席おきに座っていただくのですが、このあたりの運用も難しいです。練習にしても演奏会にしても、ある程度マネジメントがしっかりしている団体は、これまでの蓄積やOBからの援助により活動継続の道がある(そういう意味で、昨年の現役へのサポートは本当に素晴らしい英断!)のですが、それがない団体にとってはかなり厳しい状況です。
とはいえ、逆に言えば、前述のような対策を行えば安全に活動できることがわかってきたわけです。昨年11月に全日本合唱連盟による「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン」が改訂され、実験結果に基づいた信頼度の高いものになっています。
コロナ予防をしながら練習するには①直接の飛沫を浴びない②空間に漂うウイルスを吸い込まない③接触感染を防ぐーーの3点に留意する必要があることがわかっています。①はマスクによりウイルスの放出量を減らして距離をとること、②は換気をすること、③は消毒が対策となります。12月に文科省より学校に対して合唱活動の際における注意が通知されましたが、あれも全日本合唱連盟のガイドラインを引用して出されました。今後はこのガイドラインをもとにして各合唱団でより安全な活動を考えていく必要があるでしょう。
最近の大学生に話を移しますが、本当に頑張っていると思います。早稲田大学の話ですが、1月20日時点で感染者数は学生教職員合計で154人。学生・教職員総数に対する割合は0・2%です。日本全国では0・3%、東京都に限ると0・9%が感染している状況で、です。グリークラブのメンバーたちはもちろん陽性者なし。定期演奏会をなんとか開催したい、と相当気を付けて生活していたと思います。
練習も合唱連盟のガイドラインを参考により厳しい基準を設けて、マスク着用のうえ奉仕園スコットホールの2階まで広がって十分距離をとり、入り口での検温、手指・椅子の消毒はもちろん、30分ごとの換気も実施。通常1回あたり3時間とれる練習も、実働2時間程度になるほど考えうる対策を実施していました。
定期演奏会も、かなりマネージメントは大変だったようですが、感染症対策をした演奏会としては大成功を収めました。集団感染を起こすことなく、その他の演奏会関係者はみな体調不良もなかったとのことです。これは大きな成功だと思います。
他の大学を見渡すと、このように活動できるだけでもありがたい状況です。多くの大学合唱団の定期演奏会が中止になり、六連の各校でも東大コールアカデミーや立教グリーの定演が中止となりました。中には開催予定の数日前に大学より中止を言い渡された例もあったようです。この1年を失った大学合唱団はかなり今後の運営が厳しくなると思われます。なんとか頑張ってほしいところです。
最後に、先日現役の演奏会を指揮する機会をいただきましたが、ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。ここ数年、ワセグリの基礎的な技術の向上を感じていましたが、発声技術とアンサンブル力は類い稀なレベルに到達していると思います。この機会に演奏に関わらせていただいたことは大きな喜びです。
作曲者の信長貴富先生より「今日の早稲田大学グリークラブの演奏会がとても良かった。男声合唱・ピアノ・パーカッションのための《起点》は、これ以上は望めないのではないかと思える爆発的な快演で、成仏した感がある(作品が)。」という言葉をいただいたことも特筆すべきことです。
普段の活動を守ることに必死なはずなのに、新しいことへの挑戦を忘れない現役の歩みをこれからも応援していきたいと思います。