早稲田大学グリークラブは12月3日、第70回定期演奏会を東京・上野の東京文化会館大ホールで開催しました。新型コロナウイルス禍の中で迎えた3回目の定演で、50人余りのメンバーがこれまで喪われ、制限されてきた「合唱」「青春」を取り戻そうと、ミュージカルや委嘱初演など意欲的な構成の3ステージを快演しました。
第1ステージは、「男声合唱のための『おらしょ』カクレキリシタン3つの歌」(千原英喜作曲)を、学生指揮者の今井啓誓さん(4年)の指揮で演奏。9月の早慶交歓演奏会での演奏から、さらに磨きがかかった重厚なハーモニーを聴かせました。
第2ステージは、アニメソングミュージカル「合唱(うた)をとりもどせ!!」。舞台は西暦20xx年の合唱が廃れた世界、「ワセダ・レジスタンス」という〝戦隊ヒーロー〟のような赤、黒、青、緑、黄色のキャラクターを設定し、人間の心の闇に巣くう悪魔と闘うストーリーに仕立てました。
三好草平氏の指揮、角野未来さんのピアノに乗って、「北斗の拳」「デビルマン」「東京卍リベンジャーズ」などアニメのヒット曲を歌い、演出やアクションも織り交ぜて、コロナ禍でのメンバーの心の叫び、合唱の復活を高らかに歌い上げました。
第3ステージは上田真樹氏に委嘱した男声合唱組曲「心の決めたところへ」を、今井さんの指揮、渡辺研一郎氏のピアノで初演しました。ワセグリが2011年に委嘱初演した「終わりのない歌」と同様に、銀色夏生(なつお)氏の青春の爽やかさ、ほろ苦さを描いた透明感のある詩、上田氏のどこかノスタルジックな旋律を、情感のこもった柔らかいハーモニーで表現しました。
上田氏は「ちょっと気恥ずかしくなるような真っ直ぐな銀色さんの詩は、早稲グリの熱い歌声と合う」(プログラムより)といいます。
「どうしようかと迷うこと 小さな期待と大きな不安」
「迷って迷って 最後に心の決めたところへ 行けばいいかな」
「無駄な出会いはないのだから ありがとうと 今は言えます 心から」
そして終曲で、「私たちは 進みます 涙を夢に変えながら 今の自分で進みます」と、青春の新たな出発を力強く誓って、フィナーレとなりました。
11年ぶりの東京文化会館での定演は、ほぼ満員となった聴衆から終始温かい拍手を受けながら、閉幕しました。