早稲田大学グリークラブの第73回定期演奏会が12月21日、東京・錦糸町のすみだトリフォニーホール大ホールで開催されました。3ステージすべて委嘱作品で並べたチャレンジングなプラグラム構成で、約70人のメンバーが縦横無尽、変幻自在な歌声で会場を沸かせました。
第1ステージは、森山至貴氏に男声版を委嘱して10月の早慶交歓演奏会で初演した、男声合唱とピアノ連弾のための組曲「いつか必ず光は」(作詩:塔和子)。学生指揮者の米屋陽也さん(4年)の指揮、薄木葵、渡辺研一郎両氏のピアノで、ハンセン病患者の慟哭や葛藤、そして希望への光を鮮やかに描き出しました。
第2ステージは作曲家の宮川彬良氏に委嘱したステージ「アキラさんとワセグリ雑唱団がおくるゆかいな音楽教室『You Gotta Music ♪』」。2003~13年にNHK教育テレビ(Eテレ)で放映された音楽教養番組「クインテット」のテーマソング「ゆうがたクインテット」でスタートして、宮川氏のトークも交えながら「鉄道唱歌(山手線内回り」「おんぷのマーチ」「おわびのスキャット」などの番組挿入歌を演奏しました。
そして《古今東西の名曲はソドレミの音階で出来ている》との仮説をもとにした「ソドレミ・メドレー」では、「千の風になって」から「五木の子守唄」「白鳥の湖」「ツィゴイネルワイゼン」「チャコの海岸物語」「地上の星」などクラシック・民謡からポップスに及ぶ36曲を6分に詰め込み、メンバーによる見事なソロ、バイオリン、フルート演奏も加わって聴衆を楽しませました。
フィナーレは父親の宮川泰氏の代表作「宇宙戦艦ヤマト」「真っ赤なスカーフ」。ステージアンコールではヒット曲の「マツケンサンバⅡ」を会場の拍手とともに歌って踊って、万雷の拍手を受け、「ブラボー!」の連呼が長く続きました。
第3ステージは荻久保和明先生への委嘱作品、男声合唱と2台のピアノのための「にほんのえとす」。童謡や唱歌を素材に独自のアレンジをした7曲を、荻久保先生の指揮、小田裕之、十川菜穂両氏のピアノで演奏しました。文部省唱歌の「うみ」「ふるさと」で始まり、「ほたるこい」は、まさかの荻久保作品「IN TERRA PAX」の「ほうけた母の子守唄」とカップリング。「斎太郎節」と「島原の子守唄」、「あやとりの記」より「迫んたぁま」の3曲で構成した「さいたろんばい」など、聴衆の意表を突いたアレンジが随所に見られました。
終曲は「北と~悲曲~南の」と題して、「南部牛追い唄」(岩手県民謡)と「五木の子守唄」(熊本県民謡)を照応させて歌い、ステージ照明を落としながら深い余韻を残して35分間の演奏が終了。「荻久保作品らしくない」との前評判とは裏腹に、荻久保カラーに見事に染め上げられた初演となりました。
アンコールは荻久保先生の指揮で「季節へのまなざし」より「ゆめみる」(2台ピアノ版初演)、宮川氏の指揮・ピアノで「若いってすばらしい」(宮川泰作曲)を演奏。米屋さんの指揮で「心の決めたところへ」(上田真樹作曲)より「むずかしいけど」「卒業」、最後に「遙かな友に」を歌いました。
そして恒例のステージストームでは「紺碧の空」「ひかる青雲」「斎太郎節」「早稲田の栄光」を歌い、大きな拍手に包まれながら終演しました。
