響き石(239号)=238号は休みました

「一身にして二生を経る」。人生100年時代を迎えて、1度きりの生涯で2つ以上の人生を経験する生き方に共感が広がっています。その代表例が、前半生を地主・商人として生き、後半生を日本地図の測量に捧げた伊能忠敬です。
▼この言葉が初めて使われたのは、福沢諭吉の「文明論之概略」です。元々は明治維新の前と後という時代の激変を意味するものでした。それが今では、一人ひとりが自ら進む道を選択して、夢や目的を成し遂げるというアグレッシブな意味に変わりつつあります。
▼翻って、転居や転職といった大きな転機が伴わなくても「一身二生」的な生き方はあるのではないでしょうか。今の仕事を続けながら副業をやる、合唱などの趣味に没頭するのも、それに近いかもしれません。
▼三宅香帆さんの著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」(集英社新書)は、「働きながら本を読める社会」をつくるために、全身全霊ではなく「半身(はんみ)で働こう」と説きます。仕事や趣味など様々な所に居場所を作り、他者を知る文脈を増やしていく――。人生を豊かにするのに居場所や引き出しは多いに限ります。