第21回東西四大学OB合唱連盟演奏会が7月23日、昭和女子大学人見記念講堂で開催された。稲門グリークラブは岡本俊久さん(S48卒)の指揮で、早稲田大学グリークラブが1968年に委嘱初演し、77年に現在の構成となった改訂版も初演した男声合唱組曲「北斗の海」(作詩・草野心平/作曲・多田武彦)を演奏して、好評を博した。
稲グリは86人がオンステして、冒頭の「Bering-fantasy」から厚いハーモニーで、荒れ狂う海と人間の宿命を表現。2曲目の「窓」では、佐藤拓さん(H15卒)が伸びやかなテナーソロを披露した。続いて「風景」「海」と、めまぐるしく変わる海の表情と生のはかなさを描いた。そして「エリモ岬」は、明るい色彩に変わって開放的な情景でフィナーレを迎え、草野心平が描く奔放な海、時空間を超えた心象風景を歌い上げた。
今回の演奏会は「OB四連はひとつ」との理念から、恒例のエール交歓の代わりに「Gaudeamus」の全体合唱で開幕した。
最終ステージの合同演奏は全員で「希望の島」を歌った後、各団体のステージストームに移り、稲グリは東松寛之さん(H24卒)の指揮で、ワセグリ創立100周年にあたって現役グリーが歌手の小田和正さんに委嘱した「この道を行く」を演奏。最後は再び全員で「斎太郎節」を歌って閉幕した。
終演後、恵比寿ガーデンプレイスで行われた打ち上げでは、各団体が互いの演奏をたたえあいながら、得意の歌を披露する歌合戦をして親睦を深めた。
次回OB四連は2年後の2019年7月28日、大阪フェスティバルホールで開催される。
草野心平の心情に迫れた OB四連実行委員長 小岩寿樹(S52卒)
「詩を良く読んで下さい」という指揮者の岡本俊久さんの指示で、「北斗の海」の詩を20~30回は音読したでしょうか?
読むたびに、草野心平の心情に迫っていけたような気がしています。日本が暗い時代に向かっていく不安。それから戦後の荒廃した中で見た人生の辛さ、厳しさ。それらが北の海の荒々しさの中にちりばめられ、まるで私たちの人生に投影されたかのような錯覚を覚えました。「微塵になってしづんでくる」という人の命の儚さを、歌い手として私たちはうまく表現できたでしょうか?
演奏の評判は上々で、49年前や40年前の現役の演奏と比べても、また他の3校と比べても、それらに負けない早稲田らしい表現が出来たと思っています。たまたま他校が「アイヌ語」「ラテン語」「ドイツ語」だったという事もあったのでしょうが……。
「北斗の海」は、歌った経験があるメンバーが多く、早くから楽譜を外している人が多く見受けられました。にも拘わらず、私が今回初めての実行委員ということで、不慣れなことに加え、小心者だったせいで、例年になく練習回数が多く、23回にも上りました。
その練習にしっかりついてきてくれたメンバーに、また指導してくれた東松君や岡本さんに、大変感謝しています。また、私の拙さをカバーしてくれた皆様、本当にありがとうございました。
2年後の、関西でのOB四連もスタートしています。2019年7月、大阪フェスティバルホール。今から新たな企画を募りますので、アイデアのある方はお知らせ下さい。また新たなチャレンジをしていきたいと思っています。
久々の男声合唱、大いに楽しめた 指揮者 岡本俊久さん
本当に久しぶりの男声合唱で、大いに楽しませてもらった。でも、メンバーに先輩が多かったせいか、最後まで「先生」とは呼ばれなかったね(笑)
稲グリも古くは昭和30年代卒から最近の卒団者まで、年代に広がりのある素敵な合唱団になったと思う。(2008年の現役定演で男声版を初演した)「土の歌」をやった時のメンバーもいて、うれしかった。
「北斗の海」は懐かしい曲で、演奏にあたって稲グリ新聞に寄稿したメッセージで「草野心平の色彩豊かな詩を、幅広い年齢層の七色の音色で歌ってほしい」とお願いした。これは7割方は達成できたかな、と思う。
とにかく、この調子でしっかりと活動を続けていってもらいたい。ただ、やや辛口で言えば、もっと新しい曲にも積極的に取り組んでほしい。(談)