【現役ウオッチャー30年㊥】企画ステージ進化続ける~「歌って踊れる」真骨頂

ワセグリの定番ステージとしてよく挙げられるのが、一般的な合唱曲・合唱組曲ではない、いわゆる企画ステージと呼ばれるものである。ここでいう企画ステージとは、ミュージカルやオペラの一部分を振り付けや踊り付きで歌ったり、何らかのテーマを設定してオリジナルの「組曲」をつくって(委嘱も少なくない)、しばしば振り付けや寸劇付きで歌ったりするものと思っていただきたい。「組曲」といっても、比較的なじみのある曲で構成されることが多く、例えばJーPOPや歌謡曲、童謡や民謡が入ることもある。


あくまで私見だが、明らかにワセグリはこの企画ステージが多い。古くは「ウエストサイドストーリー」(1974年定演)、「ジーザスクライストスーパースター」(78年定演)、「屋根の上のヴァイオリン弾き」(83年定演)といったミュージカルステージがある。
ここ30年近く、特に東京六連でこの企画ステージがとても多いように感じられる。そして六連の観客からも「今年のワセグリのステージは楽しみ」といった声を聞くことも多くなってきたように思うのである。
六連の委嘱による企画ステージとしておそらく最も早いものが「前田憲男’sアトランダムシート」(91年)である。ジャズの巨匠、前田憲男氏に「指揮・編曲・ピアノ・演出・お話」と5つもの役割をお願いして、実に面白いステージを見せてもらった。前田氏はこの後も94年「黒人霊歌」、99年「グッドバイブレーション」、2001年「黒人霊歌」と何度もお世話になった。ワセグリを相当お気に召していただいたことは確かであろう。
90年代後半からは、次第に企画の中身がヒートアップしていったように思われる。例えば、「東京だよおっかさん’97」(97年)、「KOBUーSHI~今宵咲かせるおとこの花道~」(02年)、「ワセグリだヨ!全員集合!」(06年)、「お兄さんといっしょ」(07年)、「ワセグリ THE MOVIE~芸術劇場を封鎖せよ~」(08年)、「ワセグリ夜もヒッパレー見たい!聴きたい!歌いたい!」(12年)、「WASEGLEE ON THE BROADWAY!!」(14年)、「負け犬戦隊ルーザーズ」(16年)など、題名だけでは合唱とは思えないテーマが並ぶ。
2000年代以降の六連の企画ステージは、構成などは外部のプロにお願いして、指揮は学生指揮者が担当しているのがほとんどである。逆に、企画ステージではない場合は客演のプロの指揮者の方にお願いすることが多いようである。
見て楽しい、聴いて楽しい企画ステージであるが、手間もお金もかかるであろうし、部員諸君の苦労は察して余りある。そして、特に強調しておきたいのが、企画ステージでも、ワセグリはきちんと「歌っている」のである。発声やハーモニーは他のステージに引けを取らず、実にしっかりしている。このことは、歌って踊れるワセグリの真骨頂だと思うのである。
石毛昭範(S62卒、拓殖大学教授)