【ワセグリ人】清野耕一さん(S55卒)版画で「生命の循環」表現

美術家の清野耕一さん(S55卒)は、版画技法をベースに、平面作品から立体やインスタレーション(空間表現)へと展開し、幅広い作品を創作しています。「生命の探求」を基本テーマとしながら、生命の循環(誕生~死~再生)のダイナミズムを表現する独自の領域を開拓しています。

きよの・こういち 1957年東京生まれ。80年早大社会科学部卒、92年美学校・銅版画工房修了。93年から現在まで美学校の版画講師を務める。2002~03年、文化庁新進芸術家留学制度によりカナダ・カルガリー大学で客員作家として研究制作。

ーー34歳でサラリーマンから転身しました。
「大学卒業後、ドイツ系総合化学会社に就職しました。20代後半、出張先のドイツの美術館で偶然観たエッチング作品に魅了され、銅版画を制作するきっかけとなりました。会社勤務を続ける傍ら、東京・神保町にある美学校に入学しました。銅版画工房講師であり、国際的に活躍する刺激的な現代美術家の吉田克朗氏に出会ったことが大きな転機になったのです。吉田教室に2年間通った末、34歳の時に人生を180度転換し、会社を辞めて、美術家として制作活動に専念するようになりました。それ以来、今年でちょうど30年の節目の年を迎えます」

ーーカナダに留学し、高知国際版画トリエンナーレ展で優秀賞を受賞するなど、国内外で積極的に作品を発表しています。
「カナダ留学後、従来の版画表現から急激に変化しました。特に、2010年より国内外の美術館やギャラリーで発表してきた代表作の『Cultivation (培養体) 』シリーズは、大小様々なディスク状の作品群を床や壁に展示し、シャーレ(実験用培養皿)の中で培養された『ミクロ小宇宙』から、『マクロ大宇宙』へ展開させた壮大なインスタレーション作品です。木版と銅版画の技法を応用してキルト芯(化学繊維中綿)にプリントし、そのイメージを最終的に縫製して円盤状の立体作品に完成させています」
「昨年11月の個展(横浜市)で発表した最新作は、生命の進化の過程で発生する増殖と変異に注目して、新たな境地を試みました」

2021年11月、1010美術(横浜市内の画廊)で開催された個展風景

 

ーーグリークラブでは内政マネージャーでした。
「1979年のヨーロッパ演奏旅行、定演、内政マネージャーの経験などグリーライフは青春の素晴らしい思い出です。卒業後、福永陽一郎、北村協一両先生が指揮されたジャパン・アカデミー・コーラスの混声合唱団で歌っていました」

1979年7月、欧州演奏旅行に向かう成田空港で(後列の福永陽一郎先生の右隣が清野さん)

「グリーでの経験は、その後の私の制作活動に大いに役立ちました。様々な音楽に触れたことで、音の強弱、リズミカルな旋律、重厚なハーモニーなどの聴覚的感覚が、突然記憶の中から蘇り、私の視覚的美術表現に影響することがあるのです。また、音楽も美術も『人と人とを繋ぐ』大きな力を持っていることを確信します。現在、コロナ禍により人的交流が断たれる中、残念ながら音楽界も美術界も厳しい状況に置かれています。芸術をこよなく愛する者として、この苦境から早く抜け出せることを切に願う次第です」
構成・杉野耕一(S59卒)