【現役四連】少人数でも熱い歌声~伝わったメッセージ

第71回東西四大学合唱演奏会が6月26日、京都コンサートホール大ホールで開催されました。3年ぶりの四連で、早稲田大学グリークラブは男声合唱とピアノ(四手)のための「遊星ひとつ」(作詩:木島始、作曲:三善晃)を、清水敬一氏の指揮、小田裕之、清水史両氏のピアノで演奏しました。

合同演奏では古典的名曲「月光とピエロ」に加え、四連復活と大学合唱の復興を後押しするために作られたアンコール曲「響け、彼方へ」(作詞:伊東恵司、作曲:信長貴富)が初演されました。

「合唱には言葉がある、そして仲間が必要である」

石毛昭範(S62卒)
暑い暑い、6月とは思えない京都のまちで、熱い熱い、3年ぶりに聞かせてくれた男たちの歌声。やはり、東西四連はいい。
今回、観客の間には間隔を設けることはなかったが、ステージ上は密を避けるための配慮が行われた。最初のエール交歓、合同ステージおよび最後のストームは、客席5列目の通路に指揮台を置いての指揮であった。このため、8列目ごろまでの客席は観客を入れなかった。また、エール交歓とストームでは、歌う団以外は両端に少しずつ移動していた。なかなか見られない光景であったが、ごく自然な対応であると思われた。

合同演奏「月光とピエロ」のステリハ

想像はしていたが、各団ともオンステ人数はいささか少なくなっていた。慶應50名ほど、関学30名強、同志社と早稲田が30名弱であった。また、早稲田以外の3団体は、いずれも1年生がオンステしていたことも印象的であった(演奏会プログラムの記載による)。
しかし、人数は少なくても、それぞれの団のメッセージはしっかり伝わっていたと思う。慶應の「枯木と太陽の歌」、古典的ともいえる名曲だが、実に表情豊かな表現が印象に残った。関学の千原英喜の宗教曲、内声の厚みがよく支えた好演奏だった。同志社のコダーイ、よい意味での泥臭さやエネルギッシュさが感じられた。
早稲田は「遊星ひとつ」。三善晃の難曲ともいえる作品に挑戦した姿勢は買いたい。清水敬一氏の踊るような指揮にワセグリメンバーも大いに乗せられていたようであった。歌詞の扱いがとても丁寧であった。木島始の詩に込められた訴えが、確実に伝わってきたように思う。
合同は「月光とピエロ」。指揮者の伊東恵司氏が演奏会プログラムに記していたように、合同・単独を問わず東西四連で何度も取り上げられてきた名曲である。この曲の芯ともいうべき抒情性がまごうことなく表現されていた。ただ、合同の宿命か、forteはよく鳴るのだが、pianoがうまく響かないように感じられた。
今回は合同演奏の後のアンコール曲(新作曲「響け、彼方へ」)があらかじめ発表されていた。指揮者の伊東氏からこの曲をアンコールで歌う理由が紹介された。この曲には、四連各団のこの3年間の苦労や、昨年までの四連中止に対する無念さへのねぎらい、これからの各団への励まし、そしてこれから各団に入るであろう高校生へのメッセージが込められているという。伊東氏の「合唱には言葉がある、そして仲間が必要である」という言葉には、実に重みがあった。
日曜夜の演奏会、観客は高年齢の方がやや多く、高校生や現役大学生の姿はあまり見られなかったようであった。しかし幸いなことに、今回は期間限定ながら有料ストリーミング・サービスも実施された。若い方のみならず、遠隔地在住など多くの方に聴いていただけるこの試みは、今後も続けてほしいものである。