【応援席】大室晃子さん~10年ぶりの共演に喜び、新しい景色を楽しみに

早稲田大学グリークラブOBの皆様とは、2010年7月の東京六大学OB合唱連盟演奏会で、稲門グリークラブの「海の構図」の伴奏を務めさせていただいたご縁で出逢いました。
当時、私は東京藝大指揮科に伴奏助手として勤務していて、指揮レッスンをしていらした松尾葉子先生がこの「海の構図」をお振りになるので、その伴奏にと松尾先生からお声をかけていただいたことが、幸運の始まりでした。

大室晃子さん

そして緊張しながら最初の練習に伺った時、皆様から歓迎の歌を歌っていただいたことが、昨日のように思い出されます。なんと男らしい声! 思えばその時から「ワセグリ」にすっかりノックアウトされました。松尾先生は「名門大学出身の男性陣だから、皆さん、人としてとても魅力的」とおっしゃっていて、それはもう本当にその通り!と思います。きっとそれがあの素晴らしい歌声に繋がるのだと確信しています。
その後も皆様とご一緒させていただき、13年に第19回東西四大学OB合唱演奏会と「コバケンが振る稲門グリークラブ演奏会」で、小林研一郎先生の指揮で「水のいのち」と三木稔「レクイエム」の伴奏をさせていただいたことは、私の音楽人生の中で、最も大きな経験の一つです。
小林先生の指揮を初めて自分で「受けた」のは藝大指揮科のレッスンの時でしたが、先生が学生に代わってエグモントの冒頭をお示しになるために指揮棒を振り下ろされたときに、まるでモーゼが海を割ったように、空気が2つに分かれるのが見えたような錯覚になり、衝撃を受けました。その時から「指揮を読む」ことの楽しさに目覚め、この13年のOB会の演奏会で、先生の指揮で演奏の機会をいただいた時は飛び上がって喜び、そして皆様と共に本番まで駆け抜けることができたと思っています。
この度、10年の歳月を経て、再び「水のいのち」で伴奏を拝命し、今度はどんな景色が見えるのか、心から楽しみにしています。と同時に、あの10年前の無我夢中で伴奏した自分を超えることができるのだろうか、ということも武者震いをする思いです。そして、私のライフワークでもあるドイツリートの世界ー「さすらう若人の歌」を伴奏させていただけることも、大きな大きな喜びです。皆様と深淵な世界を造り上げて行くことを心から楽しみにしています。
(東京都足立区出身)