関西学院大学人間福祉学部教授の嶺重淑さん(S62卒)は、関学高等部から早稲田大学に入学してワセグリで活動。卒業後は関学に戻って新約聖書の研究に取り組んでいる。現在は関学グリーの現役顧問も務め、合唱活動をサポートしている。
ーー関学高等部から二浪して早大、ワセグリに入り、その後、関学に戻りました。
私の場合、卒業してからワセグリのありがたみを感じることが多いです。グリーという枠に収まったから充実した4年間が送れました。逆に入っていなかったら、消化不良の4年間になっていたと思います。思い出深いのはやはり4年の定演で、卒業後に難しい問題にぶつかるたびに当時を思い出し、励みにしました。
卒業後、横浜YMCAに就職しましたが、牧師になるために関学神学部の3年に編入しました。修士課程修了後、大阪・泉北の教会で働きながら、博士課程で新約聖書の研究を続け、スイスのベルン大学に5年間留学して神学博士号を取りました。
新約聖書の中でも「ルカ福音書」の研究をライフワークにしています。ルカ福音書は貧しい者に対する社会的な視点が投影され、格差社会での倫理的な教えなどを説いています。昨年4月、8年がかりで執筆した注解書(全3巻予定)の第1巻を出版しました。また昨年末に31年ぶりに改訳された日本聖書協会の「聖書」の編纂にも原語翻訳者として関わりました。
現在は大学宗教主事として、礼拝形式で行われる入学式や卒業式の司式を務めます。ワセグリで歌った経験のお蔭で、数千人の前でも何とか役目を果たせている気がします。
ーー関学グリーとのかかわりは。
高等部では吹奏楽をやっていて、グリーとの接点はありませんでした。でも帰国後、関学の宗教センターに関わる中で、その部署の職員であるグリーの指揮者の広瀬康夫先生と親しくさせていただくようになりました。2014年から現役顧問になり、リサイタルのほか、コンクール、東西四連などに帯同します。毎年のリサイタルの合同演奏にもオンステしています。
ーーワセグリと関学の違いは。
やはり早稲田はライブ向きです。型通りの音楽をやらないのが早稲田の良さ、魅力だと思います。関学は調和を大切にするメンタルハーモニーを追求します。最近は東西四連の性格も変わってきました。かつてのように「演奏を競う」「日本一決定戦」というのではなく、「交流を深め、楽しもう」というスタンスになってきているようです。
ーー関学はコンクールへの出場、女声合唱団の創設など改革を進めています。
関学はOB団体の新月会と現役の関係が密で、現役を支える姿勢がはっきりしています。現役も十数年前には部員が30数名にまで減少し、06年から再興プロジェクトがスタートしました。その柱となったのがコンクール出場と女子マネージャーの導入です。その結果、最近ではコンクールでも毎年金賞を受賞し、部員数も回復して、良い循環が生まれています。
昨年4月、女声合唱団「ウィメンズ・グリークラブ」を発足させました。関学の初等部の開設に合わせる形で、中高も順次共学化し、中高グリーはすでに混声になっていますが、女子の1期生の大学進学に合わせて新設しました。
これは学生合唱団の将来を見据えた一つの取り組みです。関学グリーは今年120周年を迎える日本最古の歴史を持つ男声合唱団ですが、今後は両団体が良い関係を保ちつつ発展していくことを願っています。
杉野耕一(S59卒)