何から何まで「令和初」の文字がついてくる時勢であるが、6月22日に開催された令和初の四連は積み重ねてきた歴史の重みの故か、良い意味で変わりのない、厳粛な雰囲気があったように思う。
ワセグリ単独ステージは松本望作曲の「天使のいる構図」を清水敬一氏の指揮で演奏した。この曲は筆者が現役だった第59回四連(2010年、京都コンサートホール)の合同ステージで、伊東恵司氏の指揮で演奏したことがあったのだが、合同であるが故に単独と比べてどうしても各校の練習量が不足がちで、個人的には満足な演奏ができなかったと思っている。このため、単独ステージという舞台で今のワセグリ現役と清水氏がこの曲をどのように演奏するのかというのが今回の四連における筆者最大の関心事であった。
結論から言うと、今回ワセグリはこの曲における複雑な表現を清水氏やピアノの小田裕之氏と共に見事に表現できていたように思う。曲ごとに全く違った顔を見せてくるこの組曲に対して、力強さだけではなく繊細な表現も巧みに歌い上げることができていたのはここ数年のワセグリの良い傾向である。
ただ一つ気になった点を挙げるとすれば、この曲の構成において大きな意味を持つ、終曲における1曲目のテーマへの回帰という「仕掛け」に対する表現である。音量自体のピークは曲の最後にあるのでその前に音量を出しすぎないことはもちろん大事なのだが、リタルダンドを越えて戻ってきた際に気持ちの面でも少し落ち着いてしまっていたように思えた。そこは「Ⅴ.Finale」のフィナーレに向けて、最後にもう一度振り絞って歌っていくところではないのかと個人的には感じた。
合同ステージは「IN TERRA PAX 地に平和を」を作曲者の荻久保和明氏自身の指揮で演奏した。基本的に、荻久保氏が指揮を振ると大半が名演になるので期待はしていたのだが、同時に先述した合同ステージ特有の事情もあり、多少の不安もあった。しかし心配はすぐに杞憂に終わり、大人数による大迫力のステージに筆者を含め会場が大いに沸きあがった。特に、荻久保氏の熱の入った指揮は相変わらず素晴らしいの一言で、曲間に至るまで客席にも張り詰めた緊張感を与える指揮は他ではなかなか味わえないだろう。
そして、合同ステージの成功はひとえに、過去2回の定演で「東海道四谷怪談」「炎える母」を荻久保氏の指揮で歌ったワセグリが、荻久保氏の世界感を表現することについて他校に良い影響を与えていたという点が非常に大きかったのではないかと思う。
総じて、今回の四連はワセグリが単独・合同ともに存在感を放ち、他校もそれぞれのステージで好演を披露した実に素晴らしい演奏会であった。12月7日に開催される定期演奏会にも大いに期待したい。
内村駿介(H24卒)