今年のOB四連の舞台となった大阪のフェスティバルホールは、客席数2700席、舞台幅30㍍で、音響反射板の無数の凹凸が音を様々な角度に反射させ、ホールの隅々に届ける本当に素晴らしいホールでした。
▼でも劇場やホールが市民権を得たのは、ごく最近のことです。戦後間もなく図書館法、博物館法が施行されたのに対し、「劇場・音楽堂等に関する法律」(劇場法)が制定されたのは2012年。それまで公共ホールは、体育館やプールと同列に扱われていました。
▼今、全国各地で客席数2000席級の大型ホールの建設ラッシュが起きています。人口減少社会を迎え、地域活性化の中核施設と位置づけられたためです。17年には「文化芸術基本法」が施行され、地域のホールはまちづくり、コミュニティー再生、「社会包摂」へと役割が広げられました。
▼しかし市民生活は豊かになったでしょうか。有名なアーティスト・楽団の高額チケットはすぐ売り切れる一方で、地域のホールと市民との距離は逆に広がっているように感じます。今唱えられている「芸術立国」も、市民にとってホールの敷居を高くするようになっては元も子もありません。