【聲】福永陽一郎先生作曲の「祝婚歌」、後世に歌い継いで

加藤治信(S38卒)
ワセグリOB会創立70周年記念演奏会で、福永陽一郎氏(以下、「陽ちゃん」と呼ばせていただきます)編曲の「さすらう若人の歌」が演奏されます。これを知り、「これだけは歌わないと、陽ちゃんに申し訳ない」との気持ちで心が熱くなり、もう参加することはないと考えていた稲門グリークラブに参加を決めました。
「早稲田大学グリークラブ100年史」によると、陽ちゃんとワセグリとのお付き合いは昭和50年頃からとなっています。でも私個人としては、それより遡ること10年余、私が4年生の時の東西四連(昭和37年)の合同演奏「枯木と太陽の歌」を指揮していただいてから始まったという思いがあります。

「西部の娘」に出演した筆者

この時は他大学の学生指揮者らと陽ちゃんを囲んで酒を飲んだというくらいの記憶しかありません。でも私がグリークラブを卒団し、大学院に進んだ昭和38年、陽ちゃんから声がかかりました。イタリア歌劇団の来日公演に、合唱指揮者を務めた陽ちゃんの計らいで「その他大勢」役で出演させてもらったのです。
演目はプッチーニの「西部の娘」。やはり早稲田の図々しさでしょうか、私は主役の横に割って入り、国際的歌手の歌声に圧倒されました。東京文化会館のステージに本物の馬を上げたのはその時だけとも聞いています。本当にいい経験をさせてもらいました。
このほか、陽ちゃんの推薦で藤原歌劇団の臨時団員になり、小田原男声合唱団にも誘われて、演奏会に数回出演しました。長いお付き合いの中で、何かと相談にも乗っていただきました。陽ちゃんのおかげで私の人生は充実したものになりました。感謝しかありません。
陽ちゃんにはまだまだ借りがあります。私たち夫婦は昭和40年11月、結婚式を挙げ、陽ちゃんも出席してくださいました。
挙式当日、サプライズがありました。陽ちゃんが私たちのために「祝婚歌」を作曲し、グリー同期の清水實、北村勝昭、鉅鹿明弘、金井凱史がカルテットで歌ってくれたのです。
初心者でも音取りがしやすいハ長調・4分の3拍子の軽快な曲で、「□□君(新郎)、○○さん(新婦)、いつまでも変わらぬ愛を!」と締めくくります。陽ちゃんは楽譜に「季節、月日、名前を入れかえて、広く大学グリー出身者の結婚祝に使用されることを期待します」と書いています。

「祝婚歌」の楽譜に記された福永先生のメモ

陽ちゃんが編曲した合唱曲は無数にありますが、作曲はそれほど多くありません。この祝婚歌を何とか出版できないかと、これまでいろいろ動きましたが果たせず、ワセグリでもあまり広まっているように感じられません。老い先が短くなった私としては、それが一番の気がかりです。ぜひ祝婚歌を歌い継いで、お子さん、お孫さんのお祝いに歌ってほしいと思います。

***「祝婚歌」の楽譜は以下からダウンロードできます。

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楽譜「祝婚歌」